監修 : 杏林大学医学部付属病院 皮膚・排泄ケア認定看護師 平山 千登勢
UI(尿もれ)の基礎知識と、快適に過ごすためのケアのコツ
家族のUI(尿もれ)をサポートする人に正しく知ってほしい大事な話 Vol.1
「家族がUI(尿もれ)に悩んでいて、相談されたけれどよくわからなくて…」。そんな声にお応えして、大切な家族のUI(尿もれ)を介護・ケアする人に知って欲しいUIの知識を、皮膚・排泄ケア認定看護師の平山千登勢さんが全3回にわたって解説します。
「UIに悩んでいる人の力になりたい」という人はもちろん、UIに悩んでいる人や、今後のために正しい知識を知っておきたい人もぜひ、一緒に「UI(尿もれ)」について考えませんか?
2006年に皮膚・排泄ケア認定看護師を取得し、2018年山梨大学大学院の高齢者・排泄学の修士課程を修了。杏林大学医学部付属病院で泌尿器科や消化器外科病棟で勤務し、ストーマケアや尿失禁外来を担当している。 こちらの記事もぜひ併せてお読みください
■UI(尿もれ)は誰にでも起こりうること
家族から「最近、尿もれに悩んでいて…」と相談されたとき、あなたはどんなイメージを持ちますか?UI(尿もれ)は、男性よりも女性の方が発症しやすく、20〜60代の女性4万人に行った調査*では「2人に1人以上がUI(尿もれ)を経験していた」という結果があります。
加齢のほか、筋肉量の低下、体重の増加なども主な原因で、高齢者が発症するイメージがありますが、実は20〜30代の女性が妊娠・出産をきっかけにUI(尿もれ)に悩むことも多いのも実情です。年齢に関係なく、多くの女性がUI(尿もれ)に悩んでいると言えるでしょう。
UI(尿もれ)の症状が気になったり、思わぬおねしょをしてしまったりすることで、自信を喪失したり、外出や旅行が億劫になったり…という患者さんもいらっしゃいますが、UI(尿もれ)は、正しくケアをすれば、普段と変わらない生活を送ることができます。「もう歳だから仕方ない…」とあきらめるのではなく、本人も、ご家族も、正しい知識を持って正しくケアをすることで、生活の質をよくすることができるのです。
■そもそも、「UI(尿もれ)」って?
UI(尿もれ)症状は、いわゆる「尿失禁」と呼ばれていて「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の2つに分けることができます。 尿失禁についての詳細は、ウィスパーのメディカルアドバイザーであるウロギネ専門医の野村昌良先生による、こちらの記事をご覧ください。
■デリケートゾーンを清潔に保つために、家族ができること
UI(尿もれ)のケアで大切なことは、デリケートゾーンを清潔に保つこと。一緒に住んでいるご家族がサポートできることのひとつが「シャワー便座のノズルを定期的に掃除する」ことです。 ノズルが汚染されているまま使用すると、逆に陰部に細菌が付着する可能性があります。常にきれいなノズルで洗浄できるよう、定期定期なノズル掃除を心がけたいですね。
また、日々の入浴でデリケートゾーンをしっかり洗浄し、清潔に保つことも大切です。入浴やシャワーは、無理のない範囲で実施するようにし、手助けが必要な場合はしてあげましょう。デリケートゾーンを洗うときは石鹸とお湯を使い、しっかり丁寧に洗ってください。肌で増殖するカビを洗浄できる専用の石鹸も販売されていますので、おすすめしてみるのも良いかもしれません。
■下着が湿った状態のままで放置しない
UI(尿もれ)が起こると、下着が濡れてしまいます。問題なのは「漏れてしまったこと」ではなく、デリケートゾーンを長時間、湿潤環境にさらしてしまうこと。尿が少し漏れたままの下着を放っておくと、皮膚の細菌が繁殖し、スキントラブルにも繋がります。
UI(尿もれ)専用のパンティライナーや尿ケアパッドを使用し、「濡れている状態」が長く続かないように心がけましょう。 vol.2 「UI(尿もれ)専用品デビューの正しい専用ケア用品の選びかた」 では、ケア用品の種類や選びかたについて紹介しています。 ご本人が、快適かつ清潔に過ごせる方法を自分なりに見つけていく、その手助けをするために、ご家族も正しい知識を持ち、良き相談相手としてアドバイスができると良いですね。
■専門医や看護師にも気軽に相談を
「ただの尿もれだから…」と、自分一人で悩んで、なんとか解決しようとする患者さんも、これまでたくさん見てきました。
UI(尿もれ)の種類によっては、内服薬で改善するものもあります。また、UI(尿もれ)症状がきっかけで、糖尿病や脳梗塞、難病など、別の病気が見つかるという可能性もゼロではありません。医師に相談したり、検査をしてみることをおすすめします。かかりつけの病院でも良いですし、できれば尿もれを専門的に診察できる「排尿外来」で、専門医に診てもらうと安心です。 いきなり受診するのはハードルが高いという人は、排尿専門の電話相談ダイヤルに一度電話してみるのも手です。WEBサイトやテレビ、新聞、雑誌などにも紹介されています。どんな些細な相談ごとでも構いませんので、一度問い合わせてみると良いでしょう。代理の方のお電話でも大丈夫です。
「尿失禁や排泄の相談窓口 ひまわり会」 http://urogyne-himawari.jp/
*1P&Gによる、UI(尿もれ)実態大規模調査[調査対象:全国の20代〜60代の女性40,000人 実施時期:2019年7月20日(土)〜21日(日)調査手法:インターネット調査]
※「UI」とは、「Urinary Incontinence(カタカナ表記:ユリナリー インコンチネンス)」の略語で、「尿失禁(尿もれ)」を意味する用語です。P&Gでは、「尿もれ」に対する理解が深まり、適切なケア方法がより多くの人に広まることを願い、「UI(尿もれ)」啓発活動にも努めてまいります。