UI(尿もれ)に悩んでいる人はもちろん、UIに悩んでいる人をケアしている人にも知ってほしい「骨盤底筋訓練」。

骨盤底筋を鍛えることで、UI(尿もれ)の予防や改善が期待できます。 「よし、今から訓練しよう!」と気合いを入れて行うのも良いですが、大切なのは「継続して行うこと」、忘れていても症状がある時に「やり方を思い出してできること」です。

骨盤底筋訓練は、立っていても座っていても、寝転がっていてもできる筋肉トレーニング。

今回は、骨盤底筋訓練の基礎知識と、一日何回も行く「トイレ」に行くたびに習慣化しやすい、簡単な「ながらトレーニング」を紹介します。

2006年に皮膚・排泄ケア認定看護師を取得し、2018年山梨大学大学院の高齢者・排泄学の修士課程を修了。杏林大学医学部付属病院で泌尿器科や消化器外科病棟で勤務し、ストーマケアや尿失禁外来を担当している。

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「骨盤底」や「骨盤底筋」って何?

骨盤底は、筋肉と靭帯、そして神経で構成されています。 骨盤の底で、膀胱や子宮を支えるハンモックのような役割を果たしているのが骨盤底です。 その骨盤底にある筋肉が「骨盤底筋」。女性は、妊娠中と出産時に骨盤底筋に負荷がかかります。自然分娩でも帝王切開でも、どちらも産後にUI(尿もれ)になる確率が高くなるのです。 出産以外にもさまざまな原因で、骨盤底筋に負荷がかかり、UI(尿もれ)を引き起こす可能性があります。

この骨盤底筋を鍛えることで、UI(尿もれ)の予防や改善が期待できるのです。

基本の骨盤底筋トレーニング

①骨盤底筋に意識を集中させ、膣を引き上げるようにして力を入れます。 (このとき、脚やお尻、腹筋に力を入れないように気をつけましょう) ②その状態を3〜5秒間維持しましょう。 長い時間できるようになれば、少しずつ時間を伸ばしてみてください。 ③ゆっくりと息を吐き出しながら徐々に力を抜き、力を緩めていきます

「速筋運動」と「遅筋運動」

骨盤底筋を効率よく鍛えるために大切なのは、ただ動かすだけではなく、早く動かす「速筋運動」とゆっくり動かす「遅筋運動」の両方を取り入れることです。 早く動かす「速筋運動」とは、手順①で筋肉を締め、②で緩める…というように、締めて→緩めてを繰り返す動き。 対して、ゆっくり締める「遅筋運動」は、手順①で締めたら、②でさらに締め上げ(5秒数える、などは締め上げる動きです)、③で緩める…というように、締めて、さらに締め続けてたままキープし、その後緩めた状態をキープする、という動きです。 最初は1日に30~50回程度を目安にはじめ、できる範囲で徐々に回数を増やしていけるといいでしょう。慣れてくると、1日100回程度できるようになると思います。 とは言え、一度に100回も行うのは負担がかかりすぎるので、1回の運動は5~10回程度を目安にしましょう。 なにかをしながらついでにトレーニングしたり、それを「ちょこちょこ」取り組んだりすることで、骨盤底筋も疲れないうえ、気持ちの負担も少なくできると思います。

まずはトイレで「ながらトレーニング」習慣を

まずは、トイレに行ったときに簡単にできる「ながら骨盤底筋訓練」をご紹介します。

誰でも一日に数回行くトイレ。トイレに行くたびに簡単な動きをすることが習慣になれば、一日数回の「ながらトレーニング」が行えます。

トイレの壁に、骨盤底筋訓練のイラストを貼っておくのも良いですね。 速筋トレーニングと遅筋トレーニングは、交互に行うのがおすすめ。 たとえば、トイレに行った際に速筋トレーニングをしたら、「次のトイレでは遅筋トレーニングをしよう」というように、交互に両方、取り入れてみてください。 【速筋トレーニング】

①排泄後、便座に座ったまま足を肩幅に開いて床につけ、両手をお腹に当てます。 ②膣を締めることを意識して、締めたり緩めたりを5回繰り返します。 【遅筋トレーニング】

①排泄後、便座に座ったまま足を肩幅に開いて床につけ、両手をお腹に当てます。 ②膣を締めることを意識して、膣を締めた状態で5秒数えます。 このとき、締めた部分を糸で頭の方へ持ち上げるようなイメージで行うと良いでしょう。 ③ゆっくり力を緩めていきます。体全体の力を抜いて緩めましょう。 ④2〜3の動きを5回繰り返します。

トイレでのトレーニングのコツ

便座は椅子と違って、お尻や腿の一部が便座から浮いているため、動かし方によっては少し動くような感じがあります。

大きく動いていたり、お腹が動いている場合は、動かす筋肉が違っている場合があるので、お腹が動かないよう「膣を締める」ことを意識しましょう。 また、骨盤臓器脱がある場合は、トイレットぺーパーと手で脱出している臓器を押し戻してから行ってください。 トイレに行くたびにトレーニングを行うことで、自然と習慣になっていきます。

速筋トレーニングと遅筋トレーニングを交互に行ってみてくださいね。

無理せず、気負わず、ながらトレーニング

「ながら骨盤底筋訓練」を上手に行うコツをご紹介します。

  • 1回に何十回も集中して行うのではなく、1日の間に数回づつ分散して行いましょう

  • 行う前に、手足をブラブラしたり、深呼吸して体の力を抜くと良いでしょう

  • 足は肩幅くらいに軽く開くとリラックスした状態で行えます

  • 腿やお尻、お腹に余計な力が入らないよう、力を抜いて行う意識をしてみてください

  • トレーニング中は「息を止めない」ように心がけましょう。どうしても動きに集中して息が止まってしいがちなら、声に出して数を数えたり、歌を口ずさみながら行うのもおすすめです

体調が悪いとき、気分が乗らないときは無理して行わなくて大丈夫。

もし忘れてしまっても「また次にやればいっか!」と軽い気持ちで取り入れていくことで、日々の生活にうまく取り入れながら、気楽に楽しむことができると思います。 気負いすぎず、まずは少ない回数から少しずつ「ゆるく続ける」ことからはじめてみませんか。