監修:亀田総合病院 ウロギネセンター長 野村昌良
【医師監修】骨盤底筋トレーニング
尿道を締めて尿漏れを防ぐなど重要な役割を担っている骨盤底筋を鍛えることでUI(尿もれ)の対策の一つです。
<目次>
骨盤底とは
骨盤底筋トレーニングのやり方
◆スクワットの手順
◆バードドックの手順
スイッチトレーニング
その他UI(尿もれ)を改善する方法
◆バイオフィードバック
◆食生活の見直し
◆適度な水分補給
◆体重を減量する
骨盤底筋トレーニングを日常生活に取り入れてみましょう
骨盤底筋とは
骨盤底筋とは、骨盤の底(恥骨、尾骨および坐骨の間)に位置する筋肉の総称のこと。
骨盤内にある膀胱や子宮、直腸などの臓器を正しい位置に保ったり、尿道を締めて尿漏れを防ぐなど重要な役割を担っています。
とくに女性は、妊娠や出産、加齢により、骨盤底筋の力が弱くなりがちで、トレーニングで骨盤底筋を引き締めることで、頻尿や尿漏れの改善・予防にも有効とされています。
骨盤底筋トレーニングのやり方
骨盤底筋トレーニングのステップは下記の流れです。
まずは骨盤底筋に意識を集中させてください。次に膣を引き上げるようにして力を入れます。このとき、脚やお尻、腹筋に力を入れないように気をつけてください。
最低4秒間維持してください。継続するとより長い時間できるようになります。10秒まで維持することができるか試してみてください。
口からゆっくり息を吐き出しながら徐々に力を抜いてください。これを10回〜20回連続で行うことを1セットとし、一日最低3セット繰り返してください。
骨盤底筋は体の中にあるために目で見えず、力を入れる感覚がわかりにくく、トレーニングしづらい部分であると言えます。 骨盤底筋は本来、ピンポイントで動かすことができる筋肉ですが、最初のうちはむずかしいかもしれません。 そこで、まずは周辺の筋肉を使うトレーニングを行うことが効果的です。 具体的には以下のとおりです。
スクワット
バードドック
順番に手順を解説します。
スクワットの手順
足を肩幅に開いてください。
腹筋に力を入れてください。(そして骨盤底筋にも力を入れてください)
背中を丸めずピンと伸ばした状態でゆっくりと腰をおとしスクワットの体制をとってください。
怪我を予防するために重心に気を付けながら行いましょう。
最初の立ち姿に戻ってください。
繰り返します
バードドッグの手順
四つん這いの状態になり、手は肩幅に、膝は腰幅に開きます。
背骨が一直線になるようにし、下に向きます。
おなかに力を入れ、背中をぴんと張り骨盤底筋を締めてください。
右手と左足を同時に真っ直ぐな状態になるまで持ち上げてください。このとき頭は持ち上げないようにし、5秒間キープしてください。
手と足をゆっくりとおろし、安定感を保ちながら最初の四つん這いのポーズに戻ってください。今度は左手と右足で同じ動きをしましょう。同様に5秒間維持してください。
片側5回ずつ繰り返してください。
スイッチトレーニング
スイッチトレーニングとは、骨盤底筋を締めたり緩めたりを繰り返して行う運動のこと。 本格的に骨盤底筋を鍛えたいときには、スイッチトレーニングが効果的です。 長時間・短時間の2パターンがありますので、最初は短時間から始めるど、お好みの方法で試して見てください。
長時間パターン
骨盤底筋をきつく締めてそのまま数秒間維持し、次に同じ秒数リラックスしてください。 最初は5秒間から始め、10秒間できるようになるまでトレーニングしてみましょう。
短時間パターン
骨盤底筋を1秒間きつく締めて、その後リラックスすることを繰り返してみましょう。
そUI(尿もれ) を改善する方法
骨盤底筋トレーニング以外にも、尿漏れを改善できる取り組みがあります。
たとえば以下のとおりです。
バイオフィードバック
食生活の見直し
適度な水分補給
体重の減量
順番に解説していきますね。
バイオフィードバック
バイオフィードバックとは、自分の筋肉の位置を正しく特定するのが困難な人に有効なトレーニング手段です。
バイオフィードバックでは、特殊な器具を用いて、自分の体(バイオ)の情報を受ける(フィードバック)ことができるので、骨盤底筋の収縮などの体の小さな変化にも意識を集中することができるようになります。
骨盤底筋トレーニングを行おうとしてもできない場合は、骨盤専門の理学療法士に診てもらいましょう。
食生活の見直し
カフェインやチョコレート、アルコール、炭酸飲料、辛い食べ物などの食料は、利尿作用が高く、尿の酸性度を変え、UI(尿もれ)の症状を悪化させます。
これらの過剰な摂取は、できる限り控えるようにしましょう。
適度な水分補給
どんな飲料でもたくさん飲みすぎることはトイレに行きたくなる原因となります。
UI(尿もれ)の対策として大切なことは適度に水分を補給することです。
また、尿意が近いからといって、水分の摂取量を抑えようとする人がいますが、これは逆効果なので気を付けてください。
水分を制限することは尿の濃度を濃くし、かえって膀胱を刺激することにつながります。
水分摂取はメリハリが大切です。
日中はしっかり水分を摂取し(水分制限などなければ1.5~2L程度)、夜間の頻尿が気になる方は、就寝2時間前からはコップ1杯程度にしておきましょう。
体重を減量する
肥満は、腹圧性尿失禁につながるという研究結果があり、減量すると改善することが報告されています。
適度な運動を行い適切な体重管理をすることは、UI(尿もれ)症状を緩和します。
骨盤底筋トレーニングを日常生活に取り入れてみましょう
骨盤底筋を鍛えるためには、継続的なトレーニングが必要です。
継続するのが難しいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、骨盤底筋トレーニングは普段の生活の合間にすることができます。
たとえば以下のとおりです。
家事をしながら
テレビを観ながら
デスクワークをしながら
読書をしながら
就寝前に
道具は不要で、日常のすき間時間に行える骨盤底筋トレーニング。
ご自身のペースで毎日継続して行い、尿もれ改善のために試してみてください。