監修:亀田総合病院 ウロギネセンター長 野村昌良
【医師監修】溢流性尿失禁: 症状、原因、対策法
溢流性尿失禁について
「自分で尿を出したいのに出にくい」そんな症状にお困りではありませんか?これは夜、寝ている間にも起こることがあります。
尿失禁といっても様々な症状があり、大きく別けると、次の4つに分類されます。
腹圧性尿失禁
切迫性尿失禁
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
機能性尿失禁
本記事では、この中から「溢流性尿失禁」について解説します。
溢流性尿失禁とは
溢流性尿失禁とは、「自分で尿を出したいのに出せない、でも尿が少しずつ漏れ出てしまう」といった症状のことを指します。
溢流性尿失禁は主な原因は、下記の2つです。
尿路の閉塞によって尿の流れが妨げられること
神経の損傷や排尿筋の筋力低下によって膀胱の収縮力が弱くなること
溢流性尿失禁は、上記を原因とした排尿障害を前提としていると言えます。排尿障害を引き起こす疾患の代表的なものには、下記のようなものがあります。
前立腺肥大症:肥大化した前立腺が尿道を圧迫する
膀胱結石・尿道結石:結石により尿のスムーズな流れが妨げられる
尿道狭窄症:尿道の内側が狭くなるために尿が出にくくなる
神経因性膀胱:糖尿病による末梢神経障害や、中枢神経の障害によって起こる
また、女性の場合は、下記のような疾患も原因となる場合があります。
子宮筋腫:子宮にできる良性腫瘍
子宮脱・膀胱瘤:子宮や膀胱を支える骨盤底筋がゆるみ子宮や膀胱が体外に飛び出る
溢流性尿失禁の症状とは
自分の意思とは関係なく、ダラダラと尿が漏れる
排尿を始めるまでしばらく時間がかかる
尿意があるのかどうかはっきりしない
尿が少しずつしか出ない(排尿の勢いが弱い)
このような症状が見られる場合は、溢流性尿失禁の可能性がありますので、医師の問診を受けることを推奨します。
溢流性尿失禁の治療方法
溢流性尿失禁は主に、膀胱を空にできないという慢性尿閉が原因です。膀胱を空にできず、膀胱が満杯であるというサインを脳に伝える神経の異常によって起こります。
溢流性尿失禁を起こすことがある症状
糖尿病や多発性硬化症
重度の骨盤臓器脱
骨盤内の手術(子宮や直腸の手術)
特定の内服薬の副作用
溢流性尿失禁において大きな問題の一つは、UI(尿もれ)の量が多いために、自分の日常生活に大きな影響をもたらすことです。このため、尿の臭いを気にして、外出をためらい、家にこもりがちになってしまうことも多いようです。これらのことが相まって、気分が落ち込み、自然と交友関係にも影響が出てしまうこともあるかと思います。医師に相談をし、人生を楽しめるよう、あなたに合った対策や治療計画を提案してもらいましょう。
溢流性尿失禁の治療方法?
次に溢流制尿失禁の治療方法について、ご紹介します。溢流性尿失禁の主な治療方法は下記のとおり。
例
内服
カテーテル治療、自己導尿外科手術
順番に説明していきます。
内服
切迫性尿失禁の症状を改善するために、前述の対処法を試しても改善の余地が見られないときには、医師の判断のもと、内服が提案されることもあります。
自己導尿
残尿のために溢流性尿失禁が起きるので、残尿を減らすことができれば尿失禁も治る可能性があります。どうしても残尿がある場合は、一日に3回から6回の割合で定期的に柔らかい管(カテーテル)を尿道から膀胱に入れて、その都度尿を取り除く「導尿法」を行います。病院で指導を受けた後、日常生活の中で自分で導尿を繰り返し行います(自己導尿)。
外科手術
上記のような治療法で改善しない場合、外科的手術を考慮する必要があります。
「中部尿道スリング手術」というポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通して、緩んだ尿道を支える手術を行うことが一般的です。この手術は非常に効果的で、身体への負担が少なく長期成績も優れています。
まとめ
溢流性尿失禁において大きな問題の一つは、UI (尿もれ) の量が多いために、自分の日常生活に大きな影響をもたらすことです。このため、尿の臭いを気にして、外出をためらい、家にこもりがちになってしまうことも多いようです。これらのことが相まって、気分が落ち込み、自然と交友関係にも影響が出てしまうこともあるかと思います。医師に相談をし、人生を楽しめるよう、あなたに合った対策や治療計画を提案してもらいましょう。