【連載企画⑥】 日本のウロギネ専門医 野村博士によるUI講座
更年期・閉経とUI(尿もれ)の関係
対策方法があることを理解し、希望を持つこと
※「UI」とは、「Urinary Incontinence(カタカナ表記:ユリナリー インコンチネンス)」の略語で、「尿失禁(尿もれ)」を意味する用語です。
P&Gでは、「尿もれ」に対する理解が深まり、適切なケア方法がより多くの人に広まることを願い、「UI(尿もれ)」啓発活動にも努めてまいります。
更年期・閉経によって起こる体の変化
今回は、更年期や閉経とUI(尿もれ)の関係についてお話します。女性は年齢を重ねると、更年期症状をはじめ、女性ならではの体の不調に直面していきます。
例えば、体重の増加やUI(尿もれ)といった悩みを抱える60歳以上の女性はとても多いと思います。
これらの原因は単に加齢によるものだけではなく、ホルモンバランスの変化が体に大きな影響を与えているのです。
45歳から55歳ぐらいの期間に当たる閉経前後の計10年を指す更年期には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンなどが減少し、女性ホルモンのバランスが崩れたり、それによって自律神経が乱れたりするなど、閉経に際してのいろいろな体の変化が原因で、更年期症状と呼ばれるものが起こります。
例えば、急な発汗やほてりが起こるホットフラッシュや不眠、代謝が下がることによる肥満などが一般的です。
そういったさまざまな体の変化の中で頻尿やUI(尿もれ)が起こりやすくなることもあるため、閉経後の年代でUI(尿もれ)に悩む人が増加するといえます。
UI(尿もれ)と女性ホルモンの減少の関係
まず、女性ホルモンが減った影響で体重が増加し、膀胱に今まで以上に腹圧がかかることによって「腹圧性尿失禁」が起こりやすくなります。この「腹圧性尿失禁」が起こる一番の要因は「骨盤底筋が緩むこと」なのですが、女性ホルモンが減少し、尿道や尿道を支える骨盤底筋群が弱ることによって尿道がくらぐらになってしまい、UI(尿もれ)が起こりやすくなります。
また、女性ホルモンが減少することで自律神経のバランスが悪くなることはよく知られていますが、膀胱や尿道を調節する神経系への影響によって、膀胱が過剰に活動して自分の意思とは関係なしにUI(尿もれ)が起こる「過活動膀胱」や、急に強い尿意があり、我慢できずに尿がもれてしまう「切迫性尿失禁」が起こりやすくなります。
UI(尿もれ)と自律神経の関係について
その交感神経と副交感神経からなる自律神経の調節が、閉経によりうまくいかなくなります。その結果、自律神経により支配される膀胱が不安定になりがちで、「切迫性尿失禁」が起こりやすくなります。加えて、イライラや不眠、鬱傾向になってしまうこともまた、夜間の頻尿につながることもあります。
65歳が一つの目安。さらに女性ホルモンが減少する「第二の閉経」
女性ホルモンは閉経後、65歳ぐらいまでは卵巣および脂肪細胞から微量ながら出ているといわれています。しかし、65歳をすぎて微量の分泌もなくなると、骨がもろくなったり、代謝が下がって太りやすくなったりするといわれています。
また、「切迫性尿失禁」の原因のひとつでもある過活動膀胱は、70代で4人に1人、80代なら3人に1人に見られ、その半数はUI(尿もれ)も伴います。また、年齢×肥満度の数値が高い人ほど、UI(尿もれ)や頻尿になりやすいという研究結果もあるので、年々体重が増加しているという人は、糖質を取り過ぎない食事や適度な運動を意識していただくことをおすすめします。
膀胱は心の鏡。イライラや不安を減らす努力が有効
イライラや心配ごとなど心理的な影響を受けやすい膀胱は、心の鏡といえるでしょう。なので、更年期やUI(尿もれ)を気にしすぎるのもよくありません。
秋は季節の変わり目で気温の変化も気になる時期ですが、深呼吸をしたり、リラックスできる音楽を聞いたり、心を落ち着かせる方法を見つけてみてはいかがでしょう?
さらに、自律神経を整える効果があるというヨガに挑戦してみたり、少し疲れを感じるくらいの運動をしてぐっすり眠るというのもいいですね。
また、吸水ケア製品を使うのもUI(尿もれ)の不安を解消する方法の一つではないでしょうか。尿もれ専用品は快適に過ごせる吸水機能に加えて消臭機能もついているので、自宅にいるときはもちろんお出掛けのときも、「UI(尿もれ)が起こってしまったらどうしよう…」という心配を軽くしてくれるでしょう。
医師や専門家に相談していただくことでUI(尿もれ)の原因を診断し、改善策を提案することができます。ただ、悩みの度合いに応じてではありますが、閉経後に急にUI(尿もれ)が気になるようになった場合は、ひとまず様子を見てもいいでしょう。一過性である程度たって落ち着いてくる人やセルフケアでこと足りるという人もいます。
また、自分は医者にかかるほどではないと感じる方もいると思いますので、まずは自分のUI(尿もれ)タイプを把握することが、尿もれ対策の第一歩となるでしょう。