監修: 泌尿器科医 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 泌尿器科 教授 巴 ひかる先生
【医師監修】コーヒーと頻尿の関係
身近な飲み物として幅広い世代に愛されるコーヒー。眠気覚ましや集中力アップ、気分をリフレッシュしたいときなどに飲むという人も多いのではないでしょうか。
最近では、日本をはじめ世界各国の研究によって心身ともによい影響があるとされ、ますます欠かすことのできない嗜好品となりました。ただそこで気がかりなのは、その利尿作用です。普段から頻尿やUI(尿もれ)が気になっている人は、どのような飲み方を心がけたらいいのでしょうか。今回は、利尿作用のメカニズムや、飲む量・タイミングなど、上手にコーヒーと付き合う方法を紹介します。
なぜコーヒーには利尿作用があるの?
コーヒーを飲みすぎると、なぜトイレに行きたくなるのでしょうか。それはコーヒーに含まれる「カフェイン」の作用によるものです。カフェインが身体に与える影響には「頭をすっきりさせて集中力を高めるなど、脳に対する作用」「筋肉の血管を拡張させる、血管に対する作用」「腎臓の血管を拡張し尿の排泄を促す、腎臓に対する作用」などがあります。
利尿作用は、このうち3つ目の「腎臓に対する作用」によるもの。そもそも尿は、腎臓から尿として排出される前に、99%がもう一度体内に吸収されます。残りの1%が、不要な老廃物を含んだ水分の尿として体外へ排出されるのですが、カフェインはこの腎臓で行われる水分の再吸収を抑制する働きがあります。つまり本来は体内に戻るはずだった水分が再吸収されずに排泄されるため、尿の生成量が増えて、排尿の量や回数が増加するのです。
頻尿が気になる方もコーヒーを楽しむためには?
寝る前に飲みすぎないようにする
寝る前にカフェインを大量に摂取すると覚醒作用と利尿作用の働きにより、睡眠の質が低下する可能性があります。コーヒーに含まれるカフェインの利尿作用はわずかですが、たくさん摂ると、夜間トイレに起きてしまったり、眠れなくなってしまうことがあるため、夜寝る前は控えるようにしましょう。
カフェインの1日の最大摂取量と1度の摂取量を意識する
カフェインの過剰摂取は、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加など、健康被害をもたらす場合があるため、一日に摂取する量には注意が必要です。健康な成人の場合、コーヒーの1日の目安量はコーヒーカップに約4~4.5杯まで(カフェイン400mg程度)であれば健康への影響はないといわれています※1。ただしカフェイン400㎎というのは、あくまで1日に摂取していい最大の目安量です(1回当たりの摂取量は200mg以下)。
またカフェインは、コーヒーだけではなく、せん茶やほうじ茶、紅茶、エナジードリンクなどにも含まれています。そのため1日トータルの摂取量を意識しながら飲むようにしましょう。
※1 出典 厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」
デカフェで楽しもう♪
「デカフェ」は、コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェインを含んでいる食品や飲料からカフェインを取り除いたものをいいます。日本ではデカフェに対する明確な基準はありませんが、「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約」によると、「カフェインを90%以上除去したコーヒーにあたってはその形状に関わらずカフェインレスコーヒーと記載する」と定義されています※2。手軽に購入できますので、頻尿対策に一度試してみてはいかがでしょうか。
※2 出典 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約(平成30年5月21日現在)
カフェインだけじゃない、「カリウム」にも利尿作用あり!
トイレが近くなる飲み物は、コーヒーだけではありません。オレンジジュースや柑橘系の飲み物に多く含まれる「カリウム」にも利尿作用が含まれています。カリウムを多く含む飲料は、ほかにビール、赤ワイン、トマトジュースなどが挙げられます。
またカフェインとカリウムは、単独より両方の成分が入っている方が、より尿意を感じる神経が刺激されます。例えばオレンジジュースはカリウムの量が多く、コーヒーにはカフェインもカリウムも含まれています。そのためコーヒーを飲むとより尿意を感じやすくなるのです。カリウムを多く含むスイカやメロン、キュウリなども利尿作用を高めます。
また特に利尿作用のない飲料であっても、大量に摂取すれば尿の量や回数は増えます。1日に必要な摂取量を摂るように心がけましょう。
上手くつきあって幸せな一杯を
コーヒーは好きだけど「頻尿だから」と我慢されている方は、医師への相談、飲む種類やタイミング、摂取量などに気をつけながら、楽しく、おいしくつきあいながら、コーヒーで至福のひとときを過ごしましょう。
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(プロフィール)
泌尿器科医 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 泌尿器科 教授 巴 ひかる先生
1983年、東京女子医科大学 医学部医学科卒業。同大泌尿器科等を経て、2011年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本排尿機能学会認定医、ロボット支援手術認定医、日本排尿機能学会理事、日本女性骨盤底医学会理事、日本骨盤臓器脱手術学会理事、日本性機能学会理事、日本間質性膀胱炎研究会幹事 ほか。