【監修】丸の内の森レディースクリニック 宋 美玄(ソン ミヒョン)院長
更年期の症状とUI(尿もれ)が起こる理由
更年期が始まる年齢について、宋美玄先生にお話を伺いました
年齢を重ねていくなかで、誰もが体の変化を感じるものですが、女性にとって関心の高いものといえば、更年期障害について。そこで今回は、更年期サービス「TRULY」監修のもと、産婦人科専門医としてメディアでさまざまな情報発信を続けている宋美玄先生に更年期障害の症状やUI*1(尿もれ)の原因などについてお話を伺いました。
丸の内の森レディースクリニック 院長/医学博士。子育てと産婦人科医を両立、メディア等への積極的露出で“カリスマ産婦人科医”として、様々な女性の悩み、女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。
最初に、更年期はいつ頃から始まるのかと代表的な症状について教えてください。
更年期とは「閉経の前後5年間」のことを指しており、閉経を迎える平均的な年齢が50歳なので、40代後半から更年期に入る方が多いと言われています。更年期障害の症状としてよく知られているものは、ホットフラッシュやめまい、不眠、イライラ、疲労感、手のしびれなど。人によっても違いますが、本当にさまざまな症状が表れます。
だいたいどれくらいの女性に更年期障害が出るのでしょうか?
更年期というのはほぼ全員に訪れますが、そのなかで更年期障害の症状を感じる人はだいたい半分くらいです。先ほど挙げた症状は、更年期でも早期に起こりやすいものですが、後期になると骨盤底筋がゆるんできたり、子宮が下がってきたり、膣粘膜が委縮してきたり、UI(尿もれ)をしたり、骨が弱くなったり、代謝が悪くなったりすることもあります。
更年期障害には、ほかにもうつや動悸、頭痛などいろんな症状があると言われていますが、病院で診察を受けたほうがいいですか?
たとえば、ホットフラッシュの場合、だんだん体が慣れて治まる方もいれば、すごくつらくて病院に駆け込んで来る方もいます。なので、病院に行くかどうかは、本人がどれだけ困っていて、日常生活に支障をきたしているか、というのが判断基準になると思います。ただ、更年期に対して「何が起こるかわからない恐ろしい時期」とか「自分が自分でなくなってしまう」といった不安におびえて、病院に行くのを我慢している人が多いようです。
更年期で病院に行きづらいと感じている人が多いということでしょうか?
そうですね。体が激変する思春期に病院へ行かなかったように、そもそも「更年期で病院に行く」という発想がない方もいるようですから。私はいろんなところで講演をさせていただいていますが、そういうところで出会う女性たちからも、「更年期で病院に行くのはハードルが高い」という声をよく聞きます。そういった認識が一般的に広がっているために、市販の漢方やサプリを飲んで我慢をしている方が多いのではないかなと。人や症状に合わせた対処法がいろいろとあるので、医師の立場としては、「もっと気軽に来てください!」と伝えたいです。
最近は「プレ更年期」といった言葉も聞かれますが、どのような症状のことを指すのでしょうか?
メディアではそういった言葉が見られることもありますが、医学的にはそういう概念はなく、あくまでも更年期は更年期のみ。誤った情報が原因で、女性たちの不安があおられている部分があると感じています。女性ホルモンの「エストロゲン」は30代後半あたりから徐々に減少していますが、50歳くらいで急激に減るまではほとんどの方が自覚はありません。個人差はありますが、実際に更年期に入るまではいろんな情報に惑わされないように注意していただきたいですね。それよりも、十分な睡眠とバランスの取れた食生活、そして適度な運動を意識してください。ストイックにすれば更年期がよくなるというものでもないので、最低限の健康的な生活で大丈夫です。
代表的な例としてホットフラッシュを挙げていただきましたが、原因や症状について詳しく教えてください。
これは自律神経の不調によって血管運動神経障害が起き、“体の温度センサー”が上手く働かなくなってしまうために引き起こされる症状です。夏になると気候によるものなのか、ホットフラッシュなのかがわかりにくいことがありますが、ホットフラッシュの場合は、体が熱くなったあと急に冷えることがあります。
体の不調が更年期によるものかどうかを見分ける方法はありますか?
紛らわしいものの例としては、PMS(月経前症候群)が挙げられますが、こちらは生理が来たら症状が治まるので、ある程度はそこで見分けることはできるかなと。ただ、更年期障害は年齢や環境など、総合的な判断が必要ですし、人によっても違うので、基本的には自己判断をするのが難しいものです。不安な場合や症状がなかなか収まらない場合は、病院や婦人科クリニックに相談してみるのもいいと思います。
更年期にはUI(尿もれ)を経験する女性も多いそうですが、なぜでしょうか?
UI(尿もれ)には、突然トイレに行きたくなって漏らしてしまう切迫性や急に笑ったり走ったりすることでもれてしまう腹圧性など、いくつか種類があります。主な理由としては、出産を経験していたり、慢性的に腹圧が掛かって骨盤底筋にダメージが蓄積されていたり、エストロゲンの減少によって膣粘膜が委縮していたり、というのが挙げられますが、更年期の女性では腹圧性尿失禁の症状を持つ患者さんのほうが多い印象です。
どのくらいの割合の方が経験されているのかについても、教えてください。
産後の女性だけでも約4割の方が経験していると言われていますが、40代以上の女性だと6割以上が「UI(尿もれ)経験あり」という調査結果(P&G調べ*)が出ているほど。女性は尿道が短いですし、そもそも尿道、膣、肛門と骨盤底筋に3つ穴が開いているので、女性ホルモンが減って骨盤底筋が緩んでくれば、どうしても尿がもれてしまいます。UI(尿もれ)は恥ずかしいと思う方が多いと思いますが、実は多くの方が同じ悩みを抱えているんですよ。
*1「UI」とは、「Urinary Incontinence(カタカナ表記:ユリナリー インコンチネンス)」の略語で、「尿失禁(尿もれ)」を意味する用語です。P&Gでは、「尿もれ」に対する理解が深まり、適切なケア方法がより多くの人に広まることを願い、「UI(尿もれ)」啓発活動にも努めてまいります。
*2〔調査概要〕 実施時期:2019年7月20日(土)~7月21日(日)
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国の20代〜60代の女性40,000人