更年期障害にはさまざまな症状がありますが、多くの人が経験しているもののひとつがUI*1(尿もれ)。他人には相談しにくいところはありますが、P&Gの調査*2 よると、実際には40代から60代までの女性の6割以上が経験しているという結果が出ました。そこで今回は、更年期サービス「TRULY」監修のもと、産婦人科専門医として女性たちの悩みに向き合い続けている宋美玄先生にUI(尿もれ)の対策方法やケア商品の選び方などについてお話を伺いました。

丸の内の森レディースクリニック 院長/医学博士。子育てと産婦人科医を両立、メディア等への積極的露出で“カリスマ産婦人科医”として、様々な女性の悩み、女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

UI(尿もれ)の症状が出てきた場合、病院には行くべきでしょうか?

更年期以降は骨盤底筋が弱っていることもあり、UI(尿もれ)の自然治癒はあまりないので、UI(尿もれ)した時点で、診察を受けたほうがいいですね。尿ケアパッドを使えば問題ないという場合は、少し様子を見てもいいとは思いますが、基本的に放っておいて症状がよくなることはありません。

では、UI(尿もれ)にはどのような治療法がありますか?

程度にもよりますが、まずは骨盤底筋運動の指導や薬を処方されることが一般的。ほかにはペッサリーで子宮を持ち上げたり、ひどい場合は手術をしたりすることもあります。ただ、手術は老年期に入ってからのほうがいいと思うので、更年期のときは骨盤底筋にダメージを与えず、鍛えるようにすることのほうが大切。あとは、女性ホルモンの「エストロゲン」を補充するという方法もあります。

UI(尿もれ)の症状があるときにしてはいけないことはありますか?

更年期の女性は腹圧性尿失禁の方が多いので、まずは腹圧がかかるような行動は避けてください。たとえば、ジョギングやお腹を曲げる腹筋、ジャンプ、重いものを持つなどは、通常生活しているよりも、腹圧がかかる状態になります。運動をしたい場合は、ウォーキングヨガのようになるべく腹圧のかからないものがいいですね。そのほかには、ウエストを締め付けるような洋服やストッキング、補正下着なども着用を避けたほうがいいかもしれません。体のくびれも気になるかもしれませんが、ご自分の骨盤底筋のことも大事にしていただきたいと思います。

日常生活において、自分でもできるUI(尿もれ)対策があれば、教えてください。

膣トレにも色々ありますが、私が推奨しているのは、フランス人女医ベルナデット・ド・ガスケ医師によって確立された姿勢と呼吸からペリネ(骨盤底筋群)に働きかける「ガスケアプローチ」。腹圧性尿失禁には、とてもオススメです。 ただ、そういった運動だけではなく、普段の生活からちょっとした心がけをするだけでも大きく違います。たとえば、座っているときにお腹を曲げるのではなく、肩と骨盤が離れるように背筋をまっすぐにしてみたり、くしゃみをしそうになったら膀胱を持ち上げるような感じで背中を伸ばして骨盤底筋をギュッと締めてみたり。とにかく、腹圧がかかりそうになった瞬間に、意識することが大事です。私は「膣のゆるみは、気のゆるみから」と言っていますが、そういった日々の積み重ねだけでも骨盤底筋へのダメージはかなり違います。

便秘気味の人など、排便の際にいきむことがありますが、それもよくないのでしょうか?

排便のときにいきむのは、よくないことですね。そもそも排便というのは自然とするものであって、いきんでするものではありません。なので、もしいきんでしまいそうなら、ロダンの「考える人」のように腰を突き出す感じのポーズを取ってみてください。そうすることで、普段は便が勝手に出ないように曲がっている直腸がまっすぐになり、排便がスムーズに行えるようになります。

骨盤底筋にいいグッズなどはありますか?

立ち仕事や重いものを持つことが多い人にオススメしたいのは、骨盤ベルト。恥骨の上あたりに巻くベルトのことですが、仙骨がグッと押されることで骨盤底筋の収縮を促すことができるので、腹圧による負担が軽減されます。似たもので腰椎を固定するベルトがありますが、こちらは腹圧が上がってしまうので、間違えないように気を付けてくださいね。

UI(尿もれ)ケア商品の選び方にコツはありますか?

腹圧性尿失禁のように少しだけもれるという方なら小量用や中量用から始めてみて、切迫性尿失禁のようにトイレに間に合わずに一気に出てしまうような方なら100cc~300㏄の量を吸収できる多いときや長時間用を使うといいかなと思います。どの程度尿がもれているかを知る必要がありますが、UI(尿もれ)している方にとっては、「これを付けているから大丈夫」という安心感が非常に大切なんですよね。 あとは、女性泌尿器科やウロギネセンターに行くとパッドテストのようなものがあり、自分がどのくらいの量をもらしているかを調べることもできます。対応しているところは多くないかもしれませんが、具体的に知りたい方は専門的な病院を受診するのもオススメです。

それでは、UI(尿もれ)で悩んでいる女性に向けて、メッセージをお願いします。

まず伝えたいのは、「みなさん、もれますよね」ということ。薬局などの売り場を見てわかるように、最近はかなりたくさんのUI(尿もれ)ケア商品がありますが、それだけ種類があるということは、それだけ多くの方にその症状があるということなんです。つまり、悩んでいるのはあなただけではありませんし、恥ずかしいことでもありません。ある程度の年齢になれば、誰にでも出てくる症状なんです。 なので、もれなかった頃の自分を思い出して喪失感を抱くよりも、尿ケアパッドを使っていままでと変わりなく快適に過ごすことやUI(尿もれ)とうまく付き合っていくことを考えるほうが大切だと思います。自分だけと思いつめるのではなく、みんなで明るく生きていきましょう!

*1「UI」とは、「Urinary Incontinence(カタカナ表記:ユリナリー インコンチネンス)」の略語で、「尿失禁(尿もれ)」を意味する用語です。 P&Gでは、「尿もれ」に対する理解が深まり、適切なケア方法がより多くの人に広まることを願い、「UI(尿もれ)」啓発活動にも努めてまいります。

*2〔調査概要〕 実施時期:2019年7月20日(土)~7月21日(日)

調査手法:インターネット調査 

調査対象:全国の20代〜60代の女性40,000人